ここ近年、まったくその気品ある勇姿を見ることがなくなったチョウ。
奥只見のチョウ第6話は「キベリタテハ」です。
このチョウは小学生時代、採集はおろか目撃することも難しく
憧れだけが積もり積もったチョウでした。
もともと昔から個体数は多くなく、ここ奥只見銀山平の石抱橋でも
毎年シーズンでも「一日中待って一頭採れるか」くらいの貴重なチョウで、
年間5頭も採れたらいい方でしたが、
それが2010年頃から東日本や東方地域で異常発生!!
奥只見は勿論、新潟県三国峠や長野、群馬県でもたくさん見ることができ、
蝶屋さん達は採集フィーバーに盛り上がったのですが、
2014年からパタリと姿を消してしまいました。
しっぽもここ2年はまったく見ていません。
、、、、というか見なくなりました。
キベリと同時にシータテハやクジャクチョウもいなくなってしまい、
唯一、エルタテハだけが少し見ることができるくらいです。
このチョウの魅力はなんと言っても、ビロード調の赤褐色の翅、
黄色縁、浮かび上がる青紋、バサバサ音での飛翔。
非常に貫禄と気品に満ち、存在感が大きいチョウであります。
また、このチョウの発生期は登山の季節でもあり、
チョウを知らないハイカー達も
「あんな綺麗な蝶々初めて見た」とか
「見たことない珍しい蝶、この日本にいるんだね」
と、そのくらい多くの個体数が飛びかい、皆々の目にすることができたのです。
確かにギフチョウのように、保護区で多くの個体を人々に見られるチョウではなく、
昔から山奥でひっそりと暮らしていたチョウであり、
ようやく脚光を浴びた感でした。
地面に止まってると「黒い三角」▲←こんなふうに止まっています。
裏
2012年8月
長野県高山村産
大量発生の理由も、また衰退の理由もわかっていません。
食草ダケカンバの木の低いとこで蛹化するので、
それを鹿が食い荒らすという話もありますが、
ここ新潟には鹿被害はなく、この説は薄いのではと。
しっぽ的には、最近中国から黄砂とともにやってくるPM2.5(微少粒子状物質)が
食草であるダケカンバに悪影響を与えてることが、
キベリの衰退を進ませているのではと感じております。
北海道では既にこのPM2.5でダケカンバ枯れを起こしています。
エルタテハも同じ食草であり、このエルタテハも減少していくのではと。
あくまでも、しっぽの個人的な思想です。
↑新潟県魚沼市枝折峠産
2011年9月・♂
自己採集品
ヒョウモンモドキもそうでしたが、
昆虫は絶滅前に大量発生することがあり、どうか何処かでひっそりと
世代を繋げていって欲しいと思っています。
またいつか見ることができることを祈ります。
後翅黄縁のエラー物
↑新潟県湯沢町三国峠産
2011年8月・♀
自己採集品